Research

北海道のキタキツネから見つかったH5N1鳥インフルエンザウイルス、マウスモデルでも強い病原性を確認               (渡辺研がMicrobiology Spectrum誌に発表)

  • Research

ウイルス解析研究チーム長代理 渡辺登喜子 教授

概要
七戸 新太郎 助教(大阪大学微生物病研究所)、渡辺 登喜子 教授(大阪大学微生物病研究所、大阪大学感染症総合教育研究拠点兼務、大阪大学ワクチン開発拠点 先端モダリティ・DDS研究センター兼務)、北海道大学大学院獣医学研究院、北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所、北海道大学ワクチン研究開発拠点及び滋賀医科大学 病理学講座の研究グループは、北海道のキタキツネから2022年に分離されたH5N1 HPAIVであるFox/Hok/1/22の哺乳類への影響を明らかにするため、マウスモデルを用いて詳細な解析を行いました。このウイルスは、現在世界で感染拡大しているクレード2.3.4.4bに属するH5N1 HPAIVのうち、国内で初めて哺乳類から分離された株です。まず培養細胞での増殖能を調べたところ、ニワトリ由来細胞だけでなくヒト肺細胞でも良好に増殖しました。続いてマウスに感染させた結果、肺や鼻腔だけでなく脳や肝臓、腎臓など複数臓器で高いウイルス量が確認され、強い全身性感染を引き起こすことが分かりました。とくに少量のウイルスでもマウスは重篤な症状を呈し、致死性も高いものでした。一般に哺乳類での高い病原性にはウイルス蛋白質PB2のE627Kなどの変異が関連するとされていますが、Fox/Hok/1/22にはこれらの典型的変異は存在しないにもかかわらず強い病原性を示しました。さらに感染マウスの一部では、体内で新たにPB2-627K変異が出現しており、哺乳類体内での適応変異が自然に生じ得る可能性も示されました。本研究は、現在地球規模で感染拡大しているH5N1 HPAIVが哺乳類に対して予想以上に高いリスクを持つ可能性を示し、監視体制の強化が必要であることを明らかにしたものです。

Back to Research