新型コロナウイルスオミクロン株はなぜ感染力が高いのか? -細胞表面の「ヘパラン硫酸」を足がかりにする新たな感染戦略を解明- (荒瀬研がmBio誌に発表) 2025.07.18 Research 免疫・病原体相互作用研究チーム長 荒瀬 尚 教授 ・概要 大阪大学微生物病研究所の樋口周平特任研究員、荒瀬尚教授(大阪大学ワクチン開発拠点 先端モダリティ・DDS研究センター兼務)らの研究グループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株が従来株よりも高い感染力を示す分子メカニズムを解明しました。本研究チームは、オミクロン株のスパイクタンパク質が、細胞表面に存在する「ヘパラン硫酸(HS)」と強力に結合する能力を獲得していることを突き止めました。これにより、ウイルスは本来の受容体であるACE2の発現が乏しい細胞へも効率的に侵入できるようになっていることが示唆されます。この結合能力の強化は、スパイクタンパク質上に蓄積した複数のアミノ酸変異、特にプラスの電荷を帯びた変異に起因することを明らかにしました。さらに、オミクロン株の系統内でも亜系統によってHSとの結合部位が異なっており、ウイルスがヒト細胞への適応過程で結合様式を進化させていることが示されました。加えて、細胞表面のHSは、宿主のタンパク質分解酵素TMPRSS2によって切断され、ウイルスの感染性に影響を与えるという新たな知見も得られました。これらの成果は、SARS-CoV-2の進化のメカニズムを深く理解する上で重要であるだけでなく、将来のパンデミックに備えた感染予測や新たな治療戦略の開発に貢献することが期待されます。 お使いのブラウザは audio 要素をサポートしていません。 詳しくは、こちら (PDF資料) Back to Research