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視神経脊髄炎スペクトラム障害に関わる遺伝子変異を発見 -生殖細胞系列変異と体細胞変異の双方が発症に関与- (岡田研がCell Genomics誌に発表)

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ゲノム解析研究チーム長 岡田 随象 教授

概要
大阪大学大学院医学系研究科の矢田知大さん (研究当時:遺伝統計学/神経内科学 博士課程、現:神経内科学 招へい教員)、佐藤豪さん(遺伝統計学/消化器外科学 博士課程)、小河浩太郎 助教、奥野龍禎 准教授、望月秀樹 教授(神経内科学)、岡田随象 教授(遺伝統計学/東京大学大学院医学系研究科 遺伝情報学 教授/理化学研究所生命医科学研究センター システム遺伝学チーム チームリーダー)、九州大学大学院医学研究院の磯部紀子 教授(神経内科学)らのグループは、日本人集団のNMOSD発症に関連する生殖細胞系列変異と体細胞変異、及びこれらの変異が遺伝子発現量に変化を及ぼす細胞種を、GWASメタ解析によって明らかにしました。

NMOSDは視神経や脊髄を中心とした中枢神経が障害される稀な自己免疫疾患であり、発症に関する遺伝的背景については不明な点が多く残されています。今回、研究グループは、日本多発性硬化症/視神経脊髄炎スペクトラム障害バイオバンク(Japan MS/NMOSD biobank)と協力施設から収集した日本人集団NMOSD患者240名のゲノム情報を用いてGWASメタ解析を実施しました。またその結果をPBMCのシングルセルRNA-seq情報と統合することで、NMOSDの発症に関連する生殖細胞系列変異がCD4+T細胞のサブグループにおいて疾患特異的に遺伝子発現を変動させることを解明しました。

また、ゲノム情報から染色体レベルでの体細胞変異であるmCAを検出し、NMOSDと血液腫瘍、NMOSD以外の自己免疫疾患でその頻度を比較しました。NMOSD患者は他の自己免疫疾患と比較してmCAを有するリスクが非常に高く、血液腫瘍にも匹敵しました。またmCAが検出されたNMOSD患者のシングルセルRNA-seqを解析することで、細胞種特異的なmCAの集積が起こることを見出しました。さらに体細胞変異を有する血液細胞において免疫応答に関連した遺伝子発現量の変化が起こっていることを発見しました。

本研究成果はNMOSDの病態解明、ひいては個別化医療に役立てられるものと期待されます。

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