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令和6年度CAMaD 若手研究者海外派遣支援事業 活動報告

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CAMaDでは、次世代のワクチン開発や感染症学・免疫学研究をリードする若手研究者の育成を重要なミッションの一つに掲げており、これらの分野において研究を行う若手研究者を対象に、海外での研究活動に参画するための支援を行っています。今回は令和6年度の採択者を順番に紹介いたします。

学 会 名:43rd Annual Meeting of American Society for Virology
開 催 地:Greater Columbus Convention Center(アメリカ合衆国 オハイオ州コロンバス)
渡航期間:2024年6月23日~2024年6月30日(8日間)

大阪大学微生物病研究所 ウイルス免疫分野 助教
小瀧 将裕

この度は先端モダリティ・DDS研究センター(CAMaD)の若手研究者海外派遣支援事業のご支援により、2024年6月24-28日までアメリカ合衆国にて開催された43rd Annual Meeting of American Society for Virologyに参加しました。本会は米国をはじめとする世界中のウイルス研究者が最新の研究成果を共有し、意見交換を行う重要な場です。発表内容はウイルス流行の疫学調査、ウイルス複製・病原性発現機構の解析、抗ウイルス薬・ワクチン開発など、多岐にわたります。今回は2000人以上の研究者が参加しました。
私は今回、フラッシュトークとポスター発表に採択されました。現在、私は下痢症ウイルス、特にロタウイルスの研究を行っています。ロタウイルスは小児のウイルス性下痢症の主要な原因であり、世界では未だ年間10万人以上の小児がその感染により亡くなっています。ロタウイルス感染症に対するワクチンは認可されていますが、その安全性や効果には未だ改良の余地があります。私たちの研究室はロタウイルスの人工合成法を強みとしています。今回の発表は、その人工合成法を用いて、より安全なロタウイルスワクチンやウイルスベクター開発へと応用するものでした。
発表では多くの研究者に質問を受け、活発な議論ができ、評価をしてもらえました。特に、ロタウイルスの著名な研究者であるDr. Sue E. CrawfordやDr. Siyuan Dingと意見を交換できたことが印象に残っています。この議論において、いくつかの改善点の指摘を受けました。今後、それらの点に取り組み、論文として発表するための刺激を受けました。
ロタウイルスのセッションでは合計で20程度の演題がありました。どの演題もレベルが高く、興味深いものばかりでした。また、私たちの研究室で開発されたロタウイルスの人工合成が多くの演題で使用されており、私たちの研究が世界で広く認知されていることに感銘を受けました。今回の発表では、古典的な研究手法による純粋なウイルス学の研究が多いという印象を受けました。この分野の中で、免疫学や細菌学などの多分野が融合した研究を実施することでプレゼンスを発揮できるのではと考えました。今後はCAMaDやワクチン拠点の枠組みを利用して、そのような研究を実施する必要があると強く感じました。
ロタウイルスの研究以外には、主に下痢症ウイルス関連のセッションに参加しました。アストロウイルスを専門としている研究者は日本では多くないのですが、米国では盛んに研究がなされており、その重要性を再認識しました。基礎的なウイルス学の研究が多く、興味深いものでした。ノロウイルスではウイルス学、細菌学、免疫学を融合した総合的な腸管免疫に関する演題などがあり、刺激を受けました。また、私たちが実施している研究に近い演題もあり、競争の激しさを改めて認識しました。
全体を通して、このような国際学会に参加することの重要性を感じました。下痢症ウイルス研究、ロタウイルス研究のコミュニティは大きくありません。この分野では、第一線で活躍する著名な研究者が欧米に多くいます。自分たちの投稿論文を査読する可能性の高い研究者たちに直接発表ができ、意見を交換できる場は非常に得難いものでした。緊張もしましたが、良い経験となりました。また、各演題に対する聴衆の反応を見ることも、研究のトレンドを知るために重要だと感じました。今後も定期的にこのような場に参加して自分の研究を売り込み、情報を収集する必要性を改めて認識しました。今回学んだことを活かして研究を進め、またこの場で発表できるように精進したいと思います。
最後になりましたが、今回ご支援をいただいたCAMaDの関係者各位に改めて御礼申し上げます。

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