News&Topics

令和8年度CAMaD 若手研究者海外派遣支援事業 活動報告

  • Other

CAMaDでは、感染症危機対応医薬品等の研究開発や感染症学・免疫学研究をリードする若手研究者の育成を重要なミッションの一つに掲げており、これらの分野において研究を行う若手研究者を対象に、海外での研究活動の支援を行っています。

学会活動:45th Annual Meeting for American Society for Virology(ポスター発表及びフラッシュトーク)
開 催 地:アメリカ合衆国 ミネソタ州 ミネアポリス
渡航期間:2026年7月27日~2026年7月30日(4日間)

大阪大学微生物病研究所
ウイルス免疫分野
助教 川岸崇裕

はじめに
 この度は、令和8年度先端モダリティ・ドラッグデリバリーシステム研究センター(CAMaD)若手研究者海外派遣支援事業に採択いただき、誠にありがとうございました。皆様の多大なご支援により45th Annual Meeting for American Society for Virologyに参加いたしましたので、その概要を報告いたします。
 本学会は、米国を中心に活動する基礎ウイルス学者が多数集う年次学術集会であり、米国外からも多くの研究者が参加します。対象となるウイルスは、ヒトや動物に感染するDNAウイルスおよびRNAウイルスにとどまらず、植物ウイルスやバクテリオファージなど多岐にわたります。また、研究手法に関しても、培養細胞や動物モデルを用いた実験ウイルス学、臨床サンプルや野外株の遺伝子解析に基づく疫学的研究、さらにはAIを活用したウイルス進化予測や抗ウイルス薬開発など、幅広いテーマについて活発な議論が交わされます。今回、私はロタウイルスを用いたウイルスベクター型ワクチン開発に関する研究を発表いたしました。本学会には、ロタウイルスを含む様々なウイルス研究に関する最新の知見を得るとともに、ロタウイルス研究を牽引する米国の基礎研究者と直接議論を交わし、今後の論文化に向けた有益な示唆を得ることを目的に参加しました。
発表内容の概要
 ロタウイルス(RV)は腸管上皮細胞に感染し、感染個体において全身性および粘膜免疫応答を誘導する。RVは11分節の二本鎖RNAゲノムをもち、ゲノムには6つの構造タンパク質(VP1―VP4、VP6、VP7)および6つの非構造タンパク質(NSP1―NSP5/6)がコードされている。現在は弱毒生ワクチンが確立され、世界中で効果をあげている。ヒトノロウイルス(HuNoV)は、RV同様に腸管に感染し急性下痢症状を引き起こすが、抗ウイルス薬やワクチンは存在せず現在開発段階にある。私たちはRVを用いたHuNoVワクチン開発に取り組んでいる。HuNoVキャプシドタンパク質VP1は強制発現させるとウイルス様粒子を形成することが知られている。これまでに私たちはHuNoV VP1遺伝子を搭載した遺伝子組換えRVを作製し、免疫したマウスの腸管内において抗HuNoV抗体を誘導することに成功している。しかし、抗HuNoV抗体価は低くRVベクターへの改良が求められた。本研究ではRVベクター内の外来遺伝子挿入部位を網羅的に探索し、新規の外来遺伝子挿入部位を複数同定した。緑色蛍光タンパク質ZsGを発現するレポーターウイルスを作製し、ZsG発現強度を比較することで従来のRVベクターと同程度もしくは外来遺伝子発現量の高いRVゲノムを複数同定した。さらに同定したRVゲノムを活用し、複数の外来遺伝子を同時に発現する組換えRVの作製に成功した。HuNoVにはGII.4、GII.17といった異なる遺伝子型が流行しているため、本研究成果は複数のHuNoV抗原を同時に発現する多価ワクチンの開発につながると考えられる。
発表の成果
 本研究内容について、7月27日には3分間のフラッシュトークにて発表を行い、7月28日にはポスターを実施しました。ポスター発表では、多くのRV研究者と有意義なディスカッションを行う機会に恵まれました。特に、米国でロタウイルスの基礎研究を牽引されるDr. Siyuan Ding, Dr. Kristen M. Ogdenをはじめ、ロタウイルスと同じく分節型2本鎖RNAウイルスであるレオウイルス研究の権威であるDr. Terry Dermody、さらにロタウイルスベクター開発に尽力されてきたDr. John Pattonがポスター発表に来て下さり、研究成果を評価してくださいました。論文化に向けて必要となる追加実験に関する建設的なコメントだけでなく、これまでに視野に入れていなかった新たな視点からのご質問もいただくことができました。
 さらに、本研究成果のハイライトのひとつである、「RV全11分節内への外来遺伝子挿入可能性」に関して共同研究の提案を受けるという成果を得ました。RVの非構造蛋白質NSP4は感染細胞内でViroporinと呼ばれるポアを形成し、小胞体内のカルシウムイオンを細胞質内へ流出させます。RV NSP4によるカルシウムイオンの流出を研究するDr. Joseph M. Hyserとは、NSP4による外来遺伝子発現方法について議論しました。今後、レポーターウイルスを用いてRV感染細胞内で発現するNSP4について研究を発展させていきたいと考えております。
 末筆ではございますが、本学会への参加にあたり多大なご支援を賜りましたCAMaD関係者の皆様に、心より厚く御礼申し上げます。本学会で得られた知見や議論を今後の論文化に活かすとともに、ロタウイルスベクターのさらなる改良に向けて鋭意取り組んで参ります。

Back to News & Topics